【コラム】「著作権・著作隣接権の移転等の登録」ってどんな制度??登録によって得られるメリットとは【著作権等に関する登録制度】

 特許権や商標権とは違い、著作権は、著作物を作った時点で自然に発生するものですので、権利を取得するための制度というものはございません

 ですが、文化庁(プログラムの著作物に係る著作権は、一般財団法人 ソフトウェア情報センターの登録制度を活用することで、様々な法的利益を得ることができます

 今回は、著作権等に関する登録制度のうちの一つである「著作権・著作隣接権の移転等の登録」について、制度の概要登録することによって得られるメリットについてご紹介いたします。

移転未定

最後までご覧いただけると嬉しいです。

 前述のとおり、著作権は、その著作物が作られた時点で自然に発生するものであり、著作権の取得にはどのような手続も必要ありません。これを「無方式主義」といいます。

 無方式主義は、日本が加盟しているベルヌ条約にも規定されている国際的なルールでもあります。

「登録制度」という言葉の響きから誤解されがちなのですが、著作権は、著作物を作った時点で自然に発生するため、権利を取得するための登録制度というものは、存在しません。

 また、「著作隣接権」も同様に無方式主義が採用されております

参照条文 ※令和8年7月30日時点の条文です。

 著作権法(昭和45年法律第48号)
 (著作者の権利)
第十七条 著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
 著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない

 

  (中略)

 

 (著作隣接権)
第八十九条 実演家は、第九十条の二第一項及び第九十条の三第一項に規定する権利(以下「実演家人格権」という。)並びに第九十一条第一項、第九十二条第一項、第九十二条の二第一項、第九十五条の二第一項及び第九十五条の三第一項に規定する権利並びに第九十四条の二及び第九十五条の三第三項に規定する報酬並びに第九十五条第一項に規定する二次使用料を受ける権利を享有する。
 レコード製作者は、第九十六条、第九十六条の二、第九十七条の二第一項及び第九十七条の三第一項に規定する権利並びに第九十七条第一項に規定する二次使用料及び第九十七条の三第三項に規定する報酬を受ける権利を享有する。
 放送事業者は、第九十八条から第百条までに規定する権利を享有する。
 有線放送事業者は、第百条の二から第百条の五までに規定する権利を享有する。
 前各項の権利の享有には、いかなる方式の履行をも要しない
 第一項から第四項までの権利(実演家人格権並びに第一項及び第二項の報酬及び二次使用料を受ける権利を除く。)は、著作隣接権という。



 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約 
第五条 〔保護の原則〕
 ⑴ 著作者は、この条約によつて保護される著作物に関し、その著作物の本国以外の同盟国において、その国の法令が自国民に現在与えており又は将来与えることがある権利及びこの条約が特に与える権利を享有する。
 ⑵ ⑴の権利の享有及び行使には、いかなる方式の履行をも要しない。その享有及び行使は、著作物の本国における保護の存在にかかわらない。したがつて、保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著作者に保障される救済の方法は、この条約の規定によるほか、専ら、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。
  (以下略)

★「著作隣接権」とは★

 著作物が多くの人に伝達される過程には、様々な人たちが関わることがあります。

 例えば音楽の場合、「作曲家」が曲を作って、「演奏者」がそれを演奏し、「制作会社」がそれを録音して、販売することによって、世に出ていきます。そして、「テレビの音楽番組」の運営会社などが関わることによって、より多くの人たちに音楽が届けられています。

 著作権法上の「レコード」とは、レコード盤に限らず、CDやDVD、オルゴール、ハードディスクなど媒体を問わずに、音が固定されたものをいいます。

参照条文 ※令和8年7月30日時点の条文です。

 著作権法 

 (目的)
第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

 (定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
 二 著作者 著作物を創作する者をいう。
 三 実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。
 四 実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。
 五 レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。
 六 レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。
 七 商業用レコード 市販の目的をもつて製作されるレコードの複製物をいう。
 七の二 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
 八 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。
 九 放送事業者 放送を業として行う者をいう。
 九の二 有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう。
 九の三 有線放送事業者 有線放送を業として行う者をいう。

 九の四-二十五 (略)

2-9 (略)

 

  (中略)


   第四章 著作隣接権
    第一節 総則
 (著作隣接権)
第八十九条 実演家は、第九十条の二第一項及び第九十条の三第一項に規定する権利(以下「実演家人格権」という。)並びに第九十一条第一項、第九十二条第一項、第九十二条の二第一項、第九十五条の二第一項及び第九十五条の三第一項に規定する権利並びに第九十四条の二及び第九十五条の三第三項に規定する報酬並びに第九十五条第一項に規定する二次使用料を受ける権利を享有する。
 レコード製作者は、第九十六条、第九十六条の二、第九十七条の二第一項及び第九十七条の三第一項に規定する権利並びに第九十七条第一項に規定する二次使用料及び第九十七条の三第三項に規定する報酬を受ける権利を享有する。
 放送事業者は、第九十八条から第百条までに規定する権利を享有する。
 有線放送事業者は、第百条の二から第百条の五までに規定する権利を享有する。
 前各項の権利の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。
 第一項から第四項までの権利(実演家人格権並びに第一項及び第二項の報酬及び二次使用料を受ける権利を除く。)は、著作隣接権という

  (以下略)

 参考:著作隣接権 | 文化庁(外部サイト)

制度の概要

 「著作権・著作隣接権の移転等の登録」とは、「著作権もしくは著作隣接権の譲渡等」または「著作権もしくは著作隣接権を目的とする質権の設定等」があった場合に、著作権・著作隣接権の「譲受人」や「譲渡人」、「質権者」や「質権設定者」などの一定の関係者が、著作権または著作隣接権の登録を受けられる制度です。

「著作権・著作隣接権の譲渡等」または「著作権・著作隣接権を目的とする質権の設定等」は、登録しなければ第三者に対抗することができません

参照条文 ※令和8年7月30日時点の条文です。

 著作権法 
 (著作権の登録)
第七十七条 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
 一 著作権の移転若しくは信託による変更又は処分の制限
 二 著作権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は著作権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限

 

  (中略)

 

 (著作隣接権の登録)
第百四条 第七十七条及び第七十八条(第三項を除く。)の規定は、著作隣接権に関する登録について準用する。この場合において、同条第一項、第二項、第四項、第八項及び第九項中「著作権登録原簿」とあるのは、「著作隣接権登録原簿」と読み替えるものとする。

申請することができる人

 著作権・著作隣接権の移転等の登録の申請をすることができるのは、「登録権利者」「登録義務者」です。登録権利者と登録義務者は、登録の原因によって、それぞれ次の表のように定められています。

著作権・著作隣接権の移転等に係る登録権利者・登録義務者

登録の原因登録権利者登録義務者備  考
譲  渡譲受人譲渡人
相  続相続人
信  託譲受人 = 受託者譲渡人 = 委託者 「信託の登録」は、受託者だけで申請することができることとなっているが、「権利移転の登録」とともに行う必要があり、その場合は共同申請が原則となる。
質権の設定質権者質権設定者
質権の移転質権被移転者質権移転者
質権の変更登録により利益を得る者登録により不利益を被る者
 債権金額の増加の場合
  登録権利者 = 質権者
  登録義務者 = 質権設定者
 
 質権の存続期間の短縮
  登録権利者 = 質権設定者
  登録義務者 = 質権者
質権の消滅質権設定者質権者

原則として、「登録権利者」「登録義務者」は、共同して申請することになっていますが、登録義務者の承諾書や判決文があれば、「登録権利者」の単独申請も可能です。

参照条文 ※令和8年7月30日時点の条文です。

 著作権法施行令(昭和45年政令第335号)
 (登録の申請)
第十六条 登録は、法令に別段の定めがある場合を除き、登録権利者及び登録義務者が申請しなければならない。
第十七条 登録は、申請書に登録義務者の承諾書を添付したときは、登録権利者だけで申請することができる
第十八条 判決による登録又は相続若しくは法人の合併による権利の移転の登録は、登録権利者だけで申請することができる
第十九条 登録名義人の表示の変更又は更正の登録は、登録名義人だけで申請することができる。

 

 例として「著作権の譲渡」が二人の譲受人に対して行われてしまった場合を見てみましょう。

 この図のケースだと、譲受人Aから見たら、当事者は「譲渡人」と「譲受人A」自身であり、「譲受人B」が「第三者」という関係になります。一方で、譲受人Bから見たら、当事者は「譲渡人」と「譲受人B」自身であり、「譲受人A」が「第三者」という関係になります。

 このような場合に、譲受人は、この「登録」を受けておかないと、自らが真の譲受人であることを第三者に対抗できないのです。

 たとえ譲渡①の方が譲渡より先に行われていたとしても、譲渡の方が登録された場合、譲受人Aは、譲受人Bに著作権の取得を対抗できなくなってしまいます

ビジネスシーンでは、他者に著作物を提供してもらう機会が多々あります。「著作権・著作隣接権の移転等の登録」は、そのような取引の安全を確保することができる制度なのです。

★相続その他の一般承継による著作権移転登録について

 令和元年7月1日から相続その他の一般承継による著作権移転についても登録をすることが可能となりました。しかし,登録は必須ではありません。当該著作権の移転登録の必要性,活用方法等,登録免許税額(1つの著作物につき18,000円),弁護士費用等の経費などを比較検討のうえ,登録申請されるかどうかご判断ください。

≪引用≫文化庁著作権課『登録の手引き(令和5年4月改訂)』(2023)3頁(外部サイト)

 著作権等に関する登録制度には、他にも次のようなものがあります。

実名の登録(著作権法第75条)
第一発行年月日等の登録(著作権法第76条)
創作年月日の登録 (著作権法第76条の 2) ※プログラムの著作物のみが対象
出版権の設定等の登録(著作権法第88条)

その他の制度につきましても、随時、紹介記事を作成しようと思いますので、お暇な時に見ていただけると嬉しいです。

併せて読みたい

 【コラム】「実名の登録」ってどんな制度??登録によって得られるメリットとは【著作権等に関する登録制度】

 【コラム】「第一発行年月日等の登録」ってどんな制度??登録によって得られるメリットとは【著作権等に関する登録制度】

 いかがだったでしょうか?

 今回は、「著作権・著作隣接権の移転等の登録」について、制度の概要メリットをご紹介いたしました。

 本コラムのポイントは、次のとおりです。

 最後まで、ご覧いただきありがとうございました。

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行政書士 佐藤 千峰

投稿者プロフィール

佐藤 千峰
職業:行政書士
経歴:平成30年4月から令和6年12月まで地方公務員として勤務。主に、住民税の賦課業務、例規および重要文書の審査業務などに従事。令和7年5月に行政書士事務所を開業
取扱業務:会社設立サポート、補助金申請サポート、著作権登録申請サポートなど
資格:行政書士、著作権相談員