【コラム】「実名の登録」ってどんな制度??登録によって得られるメリットとは【著作権等に関する登録制度】
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※本コラムは、令和8年6月18日時点の情報をもとに作成されております。
特許権や商標権とは違い、著作権は、著作物を作った時点で自然に発生するものですので、権利を取得するための制度というものはございません。
ですが、文化庁(プログラムの著作物に係る著作権は、一般財団法人 ソフトウェア情報センター)の登録制度を活用することで、様々な法的利益を得ることができます。
今回は、著作権等に関する登録制度のうちの一つである「実名の登録」について、制度の概要や登録することによって得られるメリットについてご紹介いたします。

最後までご覧いただけると嬉しいです。
目次
著作権の発生要件
前述のとおり、著作権は、その著作物が作られた時点で自然に発生するものであり、著作権の取得にはどのような手続も必要ありません。これを「無方式主義」といいます。
無方式主義は、日本が加盟しているベルヌ条約にも規定されている国際的なルールでもあります。

「登録制度」という言葉の響きから誤解されがちなのですが、著作権は、著作物を作った時点で自然に発生するため、権利を取得するための登録制度というものは、存在しません。
参照条文 ※令和8年6月18日時点の条文です。
著作権法
(著作者の権利)
第十七条 著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
2 著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。
文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約
第五条 〔保護の原則〕
⑴ 著作者は、この条約によつて保護される著作物に関し、その著作物の本国以外の同盟国において、その国の法令が自国民に現在与えており又は将来与えることがある権利及びこの条約が特に与える権利を享有する。
⑵ ⑴の権利の享有及び行使には、いかなる方式の履行をも要しない。その享有及び行使は、著作物の本国における保護の存在にかかわらない。したがつて、保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著作者に保障される救済の方法は、この条約の規定によるほか、専ら、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。
(以下略)
実名の登録とは
制度の概要
著作権の「実名の登録」とは、著作物の公表を「無名」で行った著作者や、「変名」を使って行った著作者が、その著作物について、「実名」(本名)の登録を受けることができる制度です。

「変名」とは、略称やペンネーム、アーティスト名など実名に代えて用いられるもののことです。
★どのくらいの人に見られたら「公表」したことになる??★

著作権等に関する登録制度において、文化庁は「公表」されたかどうかを実務上以下の基準で判断しているようです。
「登録実務では,50部以上の著作物の複製物が頒布されたことや,50人以上の人が著作物を見たり聞いたりしたことをもって,「発行」又は「公表」されたとしています。」
≪引用≫文化庁著作権課『登録の手引き(令和5年4月改訂)』(2023)23頁(外部サイト)

なお、インターネットのホームページ等を使って著作物を「公表」する場合は、そのホームページ等にアップロードした段階で「公表」されたことになるみたいです(同頁参照)。
申請することができる人
実名の登録の申請をすることができるのは、次のどちらかに該当する方です。

上記の著作者は、現にその著作権を有するかどうかにかかわらず、その著作物についてその実名の登録を受けることができます。
併せて読みたい
【サクッと読める!ミニコラム】「著作者」と「著作権者」は違う人??
参照条文 ※令和8年6月18日時点の条文です。
著作権法
(実名の登録)
第七十五条 無名又は変名で公表された著作物の著作者は、現にその著作権を有するかどうかにかかわらず、その著作物についてその実名の登録を受けることができる。
2 著作者は、その遺言で指定する者により、死後において前項の登録を受けることができる。
3 実名の登録がされている者は、当該登録に係る著作物の著作者と推定する。
実名の登録を受けるメリット
「実名の登録」には、主に次の二つのメリットがあります。

それぞれ、順に説明させていただきますね。
著作権の保護期間が延長される。
通常、個人の方が持つ著作権は、映画の著作物の著作権を除き「著作者の死後70年を経過するまでの間」存続するものと決まっています。
ですが、著作者が「無名」または「変名」で公表した著作物の著作権については、「著作者の死後」ではなく「著作物の公表後70年を経過するまでの間」存続するものとされています。
つまり、著作物を「無名」または「変名」で公表した場合、「実名」で公表した場合よりも著作権の保護期間が短いことになります。

ですが、著作者が「無名」または「変名」で公表した著作物について、この「実名の登録」を受けると、その著作物の著作権の存続期間を、「著作物の公表後70年を経過するまでの間」から「著作者の死後70年を経過するまでの間」にすることができます。

ちなみに上図のとおり、70年の起算点は、「著作物が公表された日」または「著作者が亡くなった日」ではなく、「著作物が公表された日の属する年の翌年」または「著作者が亡くなった日の属する年の翌年」の1月1日です。
参照条文 ※令和8年6月18日時点の条文です。
著作権法
(保護期間の原則)
第五十一条 著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。
2 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第一項において同じ。)七十年を経過するまでの間、存続する。
(無名又は変名の著作物の保護期間)
第五十二条 無名又は変名の著作物の著作権は、その著作物の公表後七十年を経過するまでの間、存続する。ただし、その存続期間の満了前にその著作者の死後七十年を経過していると認められる無名又は変名の著作物の著作権は、その著作者の死後七十年を経過したと認められる時において、消滅したものとする。
2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。
一 変名の著作物における著作者の変名がその者のものとして周知のものであるとき。
二 前項の期間内に第七十五条第一項の実名の登録があつたとき。
三 著作者が前項の期間内にその実名又は周知の変名を著作者名として表示してその著作物を公表したとき。
★実名の登録をしなくても……。★
著作権法の第52条第2項第3号には、「著作者が前項の期間内にその実名又は周知の変名を著作者名として表示してその著作物を公表したとき。」と規定されています。
この規定から分かるとおり、登録制度を活用しなくても、無名や変名で公表した著作物を作者の実名で改めて公表し直すことで、著作権の保護期間を著作者の死後70年を経過するまで伸ばすことができます。

また、変名で公表された著作物であっても、その著作者の変名が、みんなが知っていて、変名と著作者の顔が一致するような有名なものであれば、実名で公表された著作物と同様に、著作権の保護期間が「著作者の死後70年を経過するまで」となります。
併せて読みたい
著作者の死後における実名の登録
前述のとおり、著作者は、著作者自身が「実名の登録」の申請をする以外にも、「著作者が遺言で指定した者」に死後において「実名の登録」の申請をしてもらうことができます。

画家や作曲家といったアーティストの方たちは、作品の世界観を守るために実名を隠して活動されている方が多いかと思います。
また、アーティストでなくても、例えばブログなんかも著作権が生じ得るものですが、こういったものもインターネットで公開される都合上、実名を隠して投稿されている方が多いですよね。
そういった方たちは、遺言で申請者を指定して「実名の登録」をしてもらうことによって、自分が存命の時は、実名を隠して作品を公表しておいて、死後に著作権の保護期間を延ばすということができるのです。

参照条文 ※令和8年6月18日時点の条文です。
著作権法
(実名の登録)
第七十五条 無名又は変名で公表された著作物の著作者は、現にその著作権を有するかどうかにかかわらず、その著作物についてその実名の登録を受けることができる。
2 著作者は、その遺言で指定する者により、死後において前項の登録を受けることができる。
3 実名の登録がされている者は、当該登録に係る著作物の著作者と推定する。
登録した著作物の著作者として推定される。
「実名の登録」を受けると、登録を受けた人がその著作物の著作者であると推定されるようになります。
つまり、反対の証拠が挙がらない限り、法律上その著作物の著作者として扱われるようになるということです。
例えば、「無名」または「変名」で公表された絵画について、著作者を名乗る者が二人いた場合を考えてみましょう。

この場合だと、作品が「実名」で公表されていないので、どちらが本当の著作者か分かりません。
ですがここで、もし、一方が「実名の登録」をしていれば……。

このように登録者が著作者として法律上推定されるので、もう一方がそれを覆したい場合、反証をしなくてはいけなくなります。
これが登録することによって得られるもう一つのメリットです。

ただ、「実名の登録」をしたとしても、飽くまで「推定される」にすぎないので、反証によって推定が覆る可能性があるということは、ご留意ください。
参照条文 ※令和8年6月18日時点の条文です。
著作権法
(実名の登録)
第七十五条 無名又は変名で公表された著作物の著作者は、現にその著作権を有するかどうかにかかわらず、その著作物についてその実名の登録を受けることができる。
2 著作者は、その遺言で指定する者により、死後において前項の登録を受けることができる。
3 実名の登録がされている者は、当該登録に係る著作物の著作者と推定する。
その他の登録制度
著作権等に関する登録制度には、他にも次のようなものがあります。

実名の登録以外の制度につきましても、随時、紹介記事を作成しようと思いますので、お暇な時に見ていただけると嬉しいです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は、著作権の「実名の登録」について、制度の概要やメリットをご紹介いたしました。
本コラムのポイントは、次のとおりです。

最後まで、ご覧いただきありがとうございました。

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投稿者プロフィール
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職業:行政書士
経歴:平成30年4月から令和6年12月まで地方公務員として勤務。主に、住民税の賦課業務、例規および重要文書の審査業務などに従事。令和7年5月に行政書士事務所を開業
取扱業務:会社設立サポート、補助金申請サポート、著作権登録申請サポートなど
資格:行政書士、著作権相談員

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