【コラム】「商号」は自由に決められる?使える文字や使えない文字について解説

 「どのような商号にすべきか」、創業時に頭を悩ませるポイントの一つですよね??

 実は商号には、「使用しなくてはならない文字」や、逆に「使用してはならない文字」などのルールがいくつかございます。

 今回は、この「商号」について、創業者の方が押さえておくべきルールについて、ご紹介いたします。

商標

最後までご覧いただけると嬉しいです。

 そもそも「商号」とは何でしょうか?

 「商号」とは、会社や営業を行う人が使用する営業上の名称のことです。


 会社法(平成17年法律第86号) ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (商号)
第六条 会社は、その名称商号とする。
2・3 (略)

 商法(明治32年法律第48号) ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (商号の選定)
第十一条 商人(会社及び外国会社を除く。以下この編において同じ。)は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる。
 商人は、その商号の登記をすることができる。

使用しなければならない文字

会社の種類を表す文字の使用

 会社の商号には必ず「株式会社」「合同会社」といった会社の種類を表す文字を入れなければなりません。

 当然ですが、実際の種類とは違う会社の種類を入れることはできません。

実際は合同会社なのに、「株式会社●●」という名称を付けるというようなことはできません。

 また、「株式会社」という文字を「K.K.」や「Co.,Inc.」といった文字に代えることもできません。


 会社法 ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (商号)
第六条 (略)
 会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない
 会社は、その商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない

 (過料に処すべき行為)
第九百七十六条 (略)
第九百七十七条 (略)
第九百七十八条 次のいずれかに該当する者は、百万円以下の過料に処する。
 一 第六条第三項の規定に違反して、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字をその商号中に用いた者
 二・三 (略)

その他法令による制限

 銀行業保険業信託業の事業を営む場合は、それぞれの関係法令の規定により、「銀行」という文字や、「生命保険会社または損害保険会社であること」を示す文字、「信託」という文字を使用しなければなりません。

その他の法令でも、商号に使用しなくてはならない文字が規定されていることがありますので、ご自身が行う予定の事業に関係する法令に一度目を通しておくといいかもしれません。

 銀行法(昭和56年法律第59号) ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (商号)
第六条 銀行は、その商号中に銀行という文字を使用しなければならない
 銀行でない者は、その名称又は商号中に銀行であることを示す文字を使用してはならない
 銀行は、その商号を変更しようとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。

 保険業法(平成7年法律第105号) ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (商号又は名称)
第七条 保険会社は、その商号又は名称中に、生命保険会社又は損害保険会社であることを示す文字として内閣府令で定めるものを使用しなければならない
 保険会社でない者は、その商号又は名称中に保険会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない

 信託業法(平成16年法律第154号) ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (商号)
第14条 信託会社は、その商号中に信託という文字を用いなければならない
 信託会社でない者は、その名称又は商号のうちに信託会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。ただし、担保付社債信託法第三条若しくは事業性融資の推進等に関する法律第三十二条の免許又は金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第一条第一項の認可を受けた者については、この限りでない。

使用することができる符号

 商号には、漢字やひらがな、カタカナのほかにもローマ字その他の法務大臣が指定する符号を使用することができます。

 こちらは会社法上のルールではなく、商業登記上のルールです。会社は、設立の登記をして初めて会社として成立しますので、会社の商号を決める際には、このような商業登記上のルールも確認する必要があります。

 具体的には、次のようなものは使うことができます。

  ⑴ ローマ字(大文字および小文字)
  ⑵ アラビヤ数字
  ⑶  「&」(アンパサンド)
     「’」(アポストロフィー)
     「,」(コンマ)
     「‐ 」(ハイフン)
     「.」(ピリオド)
     「・」(中点)

 ※⑶に列記された符号は、商号の先頭や末尾に用いることはできず、字句を区切る際の符号としてしか使用することができませんのでご注意ください(「.」(ピリオド)については、省略を表すものとして商号の末尾に用いることもできます。)。
 ※ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合のみ、その単語の間を区切るために空白(スペース)を用いることもできます。

詳細につきましては、以下のリンク先をご確認ください。

  リンク:法務省:商号にローマ字等を用いることについて(外部サイト)


 会社法 ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (株式会社の成立)
第四十九条 株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する

 (持分会社の成立)
第五百七十九条 持分会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する

 商業登記規則(昭和39年法務省令第23号) ※令和8年6月25日時点の条文です。
 (商号の登記に用いる符号)
第五十条 商号を登記するには、ローマ字その他の符号で法務大臣の指定するものを用いることができる
2 前項の指定は、告示してしなければならない。

使用が禁止される名称や文字

会社ではない者が使用する会社と間違われるおそれのある文字

 個人事業主などの会社ではない方は、その商号中に会社であると間違われるおそれのある文字を用いてはなりません。


 会社法 ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (会社と誤認させる名称等の使用の禁止)
第七条 会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない

 (過料に処すべき行為)
第九百七十六条 (略)
第九百七十七条 (略)
第九百七十八条 次のいずれかに該当する者は、百万円以下の過料に処する。
 一 (略)
 二 第七条の規定に違反して、会社であると誤認されるおそれのある文字をその名称又は商号中に使用した者
 三 (略)

他の会社であると誤認されるおそれのある名称または商号

 不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称または商号を使用してはなりません。

 もし、そのようなことをして、他社の営業上の利益を侵害してしまった場合や、他社が営業上の利益を侵害されるおそれがあると判断した場合には、その会社から侵害の停止予防の請求の訴えを提起されてしまうこともあるので注意しましょう。

前もって、既に同じ商号や似たような商号が使用されていないかどうかを確認しておきましょう。


 会社法 ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (会社と誤認させる名称等の使用の禁止)
第七条 (略)
第八条 何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない
 前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる

 (過料に処すべき行為)
第九百七十六条 (略)
第九百七十七条 (略)
第九百七十八条 次のいずれかに該当する者は、百万円以下の過料に処する。
 一・二 (略)
 三 第八条第一項の規定に違反して、他の会社(外国会社を含む。)であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用した者

同じ所在場所にある既に登記済みの他社の商号

 他の人や会社が既に登記した商号が同じ所在場所にある場合は、その商号について登記することができません。

登記情報は、国税庁の「法人番号公表サイト」や法務局の「登記情報提供サービス」(有料です。)などを活用すると、ご自宅からでもオンラインで確認することができます。

  リンク:国税庁法人番号公表サイト(外部サイト)

      登記情報提供サービス|法務局が保有する登記簿・公図等の情報をご提供(外部サイト)


 商業登記法(昭和38年法律第125号) ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止)
第二十七条 商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。

公序良俗に反する商号の禁止

 民法(明治29年法律第89号)の規定により、公序良俗に反する商号は使用することができません。

 公序良俗とは、「公の秩序または善良の風俗」を略した言葉です。

使用を予定している商号が公序良俗に反するかどうかは、個別具体に判断されます。

 民法 ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

その他法令による制限

 前述のとおり、銀行業や保険業、信託業などの事業を営む場合は、それぞれの関係法令の規定により、「銀行」という文字や、「生命保険会社または損害保険会社であること」を示す文字、「信託」という文字を使用しなければなりません。

 その逆に、これらの事業を行わない場合は、商号中にそれらの文字を使用することができません

 銀行法 ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (商号)
第六条 銀行は、その商号中に銀行という文字を使用しなければならない
 銀行でない者は、その名称又は商号中に銀行であることを示す文字を使用してはならない
 銀行は、その商号を変更しようとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。

 保険業法 ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (商号又は名称)
第七条 保険会社は、その商号又は名称中に、生命保険会社又は損害保険会社であることを示す文字として内閣府令で定めるものを使用しなければならない
 保険会社でない者は、その商号又は名称中に保険会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない

 信託業法 ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (商号)
第14条 信託会社は、その商号中に信託という文字を用いなければならない
 信託会社でない者は、その名称又は商号のうちに信託会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。ただし、担保付社債信託法第三条若しくは事業性融資の推進等に関する法律第三十二条の免許又は金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第一条第一項の認可を受けた者については、この限りでない。

「屋号」との違い

 商号と似た言葉に「屋号」というものがあります。

 「屋号」とは、個人事業主が営業上使用する名前のことです。

 商号との違いとしては、屋号には法的な拘束力がありません

後々、法人成りをするときに「屋号」をそのまま「商号」として引き継ぎたいと考えているのであれば、「商号」のルールを意識して「屋号」を決めておくと良いかと思います。

「商標」との違い

 商号と混同しがちな言葉として、他にも「商標」というものがあります。

 「商標」とは、人の知覚によって認識することができるもののうち、➀文字、➁図形、③記号、④立体的形状もしくは⑤色彩または➀~⑤の結合、⑥音などであって、次に掲げるものをいいます。

 ⑴ 業として商品を生産し、証明し、または譲渡する者がその商品について使用をするもの
 
 業として役務を提供し、または証明する者がその役務について使用をするもの(⑵に掲げるものを除きます。)

「商号」が、会社や個人事業主自身を示す名称であるのに対し、「商標」は、その事業者が取り扱う「商品」「サービス」について使用をするものになります。

 特許庁に登録された「商標権」の商標権者は、指定商品指定役務について登録商標を独占排他的に使用する権利を持っています。また、商標権には、類似範囲において他人の使用を制限できる効力もあります。

 ですので、商号を決める際には、自社が取り扱う商品やサービスと同一または類似する商品やサービスについて、同一または類似する商標が登録されていないか確認する必要があります

登録商標の調査には、独立行政法人 工業所有権情報・研修館が運営する「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」が便利です。

  リンク:特許情報プラットフォーム|J-PlatPat [JPP](外部サイト)

Check

登録商標の調査や権利侵害の有無の判断には専門的な知識が求められますので、弁理士さんや商標法(昭和34年法律第127号)に詳しい弁護士さんに相談しながら進めることをお勧めいたします。


 商標法 ※令和8年6月26日時点の条文です。
 (定義等)
第二条 この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
 一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
 二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
 前項第二号の役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする。
3・4 (略)
 この法律で「登録商標」とは、商標登録を受けている商標をいう。
6・7 (略)

 (商標権の効力)
第二十五条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

 (侵害とみなす行為)
第三十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
 一 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
 二 指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
 三 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
 四 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為
 五 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為
 六 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為
 七 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為
 八 登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為

 いかがだったでしょうか?

 今回は、「商号」について、基本的なルールをご紹介いたしました。

 本コラムが、皆様の起業準備の一助となれば幸いです。

 最後まで、ご覧いただきありがとうございました。

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行政書士 佐藤 千峰

投稿者プロフィール

佐藤 千峰
職業:行政書士
経歴:平成30年4月から令和6年12月まで地方公務員として勤務。主に、住民税の賦課業務、例規および重要文書の審査業務などに従事。令和7年5月に行政書士事務所を開業
取扱業務:会社設立サポート、補助金申請サポート、著作権登録申請サポートなど
資格:行政書士、著作権相談員