【コラム】重要文書作成時における「等」「など」の使い方について【行政書士が解説】
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文書を作成する際によく使われる「等」「など」といった用語ですが、皆さんはどのような場面で使われるでしょうか?
「列挙する事項が多すぎて、全てを書き出すと文章が長くなってしまうから」とか「文書の作成時には想定できないような事項にも対応できるようにするため」とか、中には「ただ、なんとなく付けてみた」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この「等」「など」といった用語は、「文中に示す事項だけではなく、それに類する事項まで含まれますよ。」ということを表現したいときに使える、とても便利な用語です。
ですが、この用語、便利な反面、安易に使用するにはリスクがあるものなんです。
目次
「等」「など」を使うと、文章が明確さを欠く危険性がある。
例えば、とある公園にこんな看板が立っていたとします。

これを見た住民たちは、どのように考えるでしょうか?

(ちょっと設定に無理がありますが……。)このように、「等」「など」といった用語を使った場合、文章が明確さを欠き、読み手によって解釈が変わってしまうというようなことが起こりえます。
特に契約書や社内規程のような、人の権利・義務に関わる重要な文書には、本来、用いるべきではないものといえます。
そうはいっても、現実的には、文書作成時に将来起こりうる事態を全て想定し、列挙することは、難しいですよね。
ですので、今回は、「等」「など」を使う際に意識したいポイントについて、書類作成のプロである行政書士が解説いたします。
「等」「など」を使う際に意識したい三つのポイント
後ろに付ける用語の選択を意識する。
まず一つ目のポイントは、「等」「など」の後ろに付ける用語の選択です。
上記の例では、文章が少し簡単すぎましたが、本来であれば、「等」「など」を使う際、「サッカーなどの〇〇」というように、「等」「など」の前に掲げた事項を包括する用語を「等」「など」の後ろに置くのが、一般的です。
この後ろに置く用語にどのようなものを選択するかによって、読み手の解釈が変わるので、注意が必要です。
例えば上記の例で、
『サッカーなどの運動をしないでください。』
だと、「サッカー」のようにボールを使うわけではないけど、運動ではある「鬼ごっこ」については、できるのかどうか、まだ不明確ですよね。
では、
『サッカーなどの球技をしないでください。』
だとどうでしょう?
これなら、大多数の方が、「野球」はダメだけど、「鬼ごっこ」はOKなんだなという結論に達すると思います。
このように、「等」「など」の後ろに置く用語の選択によって、読み手の解釈の幅をコントロールすることができます。

「等」「など」の前には、できるだけ二つ以上の事項を掲げる。
二つ目のポイントとしては、「等」「など」の前には、できるだけ多くの事項を掲げることです。
同様に上記のシチュエーションで、次の四つの表記の仕方を見てみましょう。
① 『サッカーなど』
② 『サッカー、野球など』
③ 『鬼ごっこなど』
④ 『サッカー、野球、鬼ごっこなど』
上記①から④までを図示してみると、次のようになります。

この図に示された枠は、➀から④までの表記の仕方をした場合に、禁止されているという解釈が及びやすくなる範囲を示したものです。
例えば、①『サッカーなど』と表記した場合、「サッカー」はもちろんできないんだなということで、読み手全員の解釈が一致すると思います。
ですが、「野球」や「鬼ごっこ」まで禁止されているかどうかは、それぞれの読み手の解釈に委ねられるでしょう。
では、②『サッカー、野球など』と表記をした場合はどうでしょうか?
「サッカー」と「野球」はもちろん、その二つが属する「球技」というジャンルが禁止されているようにも読めますので、他にも「バレーボール」や「ドッヂボール」といった球技も禁止されているように見えますし、逆に「鬼ごっこ」については、➀と比較すると禁止されていないという解釈がされやすくなりました。
このように、「等」「など」の前に掲げる事項を増やすほど、表記されていない事項をどのように解釈すべきかが明確になっていきます。
★ワンポイントアドバイス★

前に掲げる事項が多くて、文章が長くなってしまう場合は、次のように各号列記にしたり、箇条書きしたりすると、視覚的に文章がスッキリとします!
例
原 文:公園では、サッカー、野球、鬼ごっこ、・・・など公園を利用する他の人に危害が及ぶ恐れがある行為は、しないでください。
修正案:公園では、次に掲げる行為はしないでください。
⑴ サッカー
⑵ 野球
⑶ 鬼ごっこ
・
・
・
⑻ 前各号に掲げるもののほか、公園を利用する他の人に危害が及ぶ恐れがある行為
目的や背景、趣旨を明記する。
三つ目のポイントとして、作成する書類の目的や趣旨、作成に至った背景を明記しておくことが挙げられます。
またまた上記の例で考えてみましょう。
例えば、この『公園内では、サッカーなどをしないでください。』というルールが、
① 『近隣住民の家や隣接する道路を走行中の車に、ボールが当たり損害を与えることを防ぐため』
という目的のために生まれたものだった場合は、どうでしょうか?
この場合は、「野球」や「バレーボール」といった、他の球技でも同じような事故が起こりうるため、これらも禁止の対象となっていることが、想像できますよね。
ですが、「鬼ごっこ」や「かくれんぼ」といった遊びは、公園の外に出ない限り、近隣住民や近くを通りがかった人の財産を傷つけるというようなことは考えにくいため、これらは禁止されていないものと解釈されやすいでしょう。
では、
② 『公園内における利用者の活動に伴って生じる騒音から、近隣住民の生活環境を守るため』
という目的のために生まれたものだった場合は、どうでしょうか?
この場合は、「サッカー」や「野球」といった球技に限らず、足音や大きな声が上がりやすい「鬼ごっこ」のような遊びまで禁止されているものとの解釈がされやすくなります。
このように、目的や趣旨、背景などによっても文章の解釈のされ方は変わりますので、あらかじめそれらを明記しておくことで、書き手と読み手の間に共通認識を作り、ある程度、解釈の齟齬を防ぐことができます。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は、重要文書作成時における「等」「など」の使い方について解説してみました。
本コラムのポイントは、次のとおりです。

以上の点について、書類作成時に迷った際には、ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。
最後まで、ご覧いただきありがとうございました。

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投稿者プロフィール
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職業:行政書士
経歴:平成30年4月から令和6年12月まで地方公務員として勤務。主に、住民税の賦課業務、例規および重要文書の審査業務などに従事。令和7年5月に行政書士事務所を開業
取扱業務:会社設立サポート、契約書の作成・修正など
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